サマーソニックという野外ロックフェスティバルの千葉・マリンスタジアム会場でビヨンセのライブを見ました。
もうこれは「すげぇ!」「完璧!」「なんじゃこりゃ!」としか表現できないものでした。
南の海上にある台風の影響で夕方から突然のにわか大雨が降ったりやんだりの不安定な天気でしたが、20時すぎ、ビヨンセを舞台に迎えるころには少し涼しい風も吹いたり。
ステージはちょっと前から黒幕が下りてセットがどんなことになってるのかわかりませんが、アリーナの前方、真ん中に小さなステージが作られていて、「あそこにビヨンセがくるの?」「どうやって」とそれだけでも期待が高まります。
SEが消え、場内暗転。と、黒幕が開き、一筋のスポットを浴びたビヨンセの姿が照らし出されます。しかもビヨンセ仁王立ち! それだけで会場からおーという地響きのような歓声が沸きます。そしてバンドが「ジャンッ!」と音を奏でるのに合わせ、ビヨンセ右を向く、亜麻色の長い髪がしゃらりと揺らめく。それでまた巨大な歓声。「ジャンッ!」今度は左向き。また髪がさらりっ! おおおーーーーっ! 地響き。その姿勢のまま、ビヨンセが微動だにしないこと数秒の間に、歓声がどんどんボルテージを上げる、という阿呆のような盛り上がり。
そしてついに曲が始まると、もう衣装もダンサーもバンドもなにもかもキラキラしてて、歌も踊りもちょっとしたしぐさも全部パワフルで、格好よくて、楽しくて、圧倒的。
その後、何度かのお色直しの間は、ドラム缶が皮のジャンプスーツ着たみたいなはちきれんばかりの姉御がギターソロをかましたり、同じく肉弾のようなお姉さんがベースソロでマイケル・ジャクソンのカバーを演ったり(出だしはジミ・ヘンドリックスばりの背中弾き!)、同じく叶姉妹何ものぞという肉団子3姉妹コーラスが台風も地震も跳ね除けるようなぶっとい歌声を披露したり(開演直前に震度4の地震もあったのでした)、とにかく魅せるのです。
「あービヨンセが今着替えてんだな。つなぎだな」という脱力した時間を客に与えず、すべての時間がビヨンセ・ショウの等しく重要なワンシーンとして演出され、それがもれなく客を沸かせるのです。すごいのです。
途中、バラードシークエンスではアヴェマリアを披露。白い羽を装着してチュチュのようなスカート姿になり、髪にはティアラとウェディングドレス風になっていた「乙女?」なあの感覚は謎だったが、おやりになりたいならどうぞ!という説得力に数万の観客があっさり押し切られた形。ビヨンセには台風も地震も数万の客も太刀打ちできないのだ。
なんなんだこの人は?
躍って煽って盛り上げ、一方「微動だにしない」という技も使い、スタジアムを好きに操る神業の持ち主がついに、さっき見ていたアリーナの小島に移る。「地下通路を使うのか?」「クレーンか?」「空中遊泳か?」 固唾を呑むが、意外にもメインステージから客席の高さまで降りていき、普通に通路を通っての移動。しかも、小島には最初ひとりで上がり、観客の見上げる目線の数十センチ先で、尻を突き出し股を容赦なく広げて縦横に躍っている。その様子に数万の阿呆が釘付けになっている。
この破格の天才ぶりと、観客への距離感のギャップはなんなんだろう?
常々感じていたけれど、この夜確信した。わたしたちはまだ、ビヨンセの正当な価値を査定できていないんだ。
サマンサ・タバサの新製品のプロモで気楽にバラエティに出たり、キムタクとツーショットしたり、スマスマ出たりしてるが、PVで見るビヨンセは、その才能の横溢っぷりは、日本のテレビに消費される範疇のものじゃない、もっと途轍もなくスケールがでかく、わけわからないくらいに新しかった。
じゃあどうしてそのすごさが正しく評価されないかというと、ビヨンセを形容する描写を私たちがもっていないし、発見できてないからだと、この夜、はっきりわかった。私たちは誰もビヨンセに追いつけてないのだ。
だから私たちはビヨンセのパフォーマンスを前にすると、「かっこいー!」とか「すげぇ!」とかしか言えないし、阿呆のように口をあけてみてるしかないのだ(実際、ステージのスクリーンに映し出された男性客のひとりが見事にぽかーんとしていて、会場中が「そうなるよね!」と納得していた)。
ビヨンセは、本当に、心底、「なんじゃこりゃ!」な生き物だった。
女の武器(乳とか尻とか長い髪とか柔らかいくちびるとか)は今まで、男に劣った立場の女が利用するハンデのようなものだったけれど、ビヨンセは男女が並んだ地点からさらにチューンナップする道具として女の武器を使っている。だからビヨンセはこんな風に、男ができないことができるし、男が行けない高みまで上ってる。しかもまだまだ上りそう。すげぇ。
とにかく、あんなパワフルで完成度の高いパフォーマンスができるアーティストはしばらく出てこないんじゃないかと思う。10月には来日。単独公演あります。みなさんも最新鋭の人類をぜひ目撃してください。見ると元気になります。
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