風のガーデン 第9回 2008/12/04放送分 

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 息子と和解するためにトレーラーハウスに向かった貞三(緒形拳)だが、そこで見たのは点滴につながれた貞美(中井貴一)の姿。散らかったゴミの中にがん疼痛予防の薬、そして末期症状を無情にも証明するレントゲン写真も...。

 混乱して逃げ出す貞三だが、家に帰る頃には落ち着いていて、ルイ(黒木メイサ)に「今日、会いに行ったことは貞美にも岳(神木隆之介)にも黙っててくれ」と言い置いて「調べモノがあるから」と翌日札幌に向かう。

 行き先は貞美の親友・水木(布施博)のクリニック。レントゲンがここの封筒に入ってたのでピンと来たのだ。息子はここで治療を受けていると。単刀直入に訊ねると、水木は貞美の病状について、ここまでの経緯について話してくれた。「悪い夢であってほしい」と念じてたが、貞美が末期がんでもう先は長くないという事実は翻らなかった。

 貞美はその足で義姉(草笛光子)に会いに行く。そして、貞美が戻ってきていること、がんで長くないこと、を自分の心を整理するように話す。「どうすればいいでしょう」貞三の問いに「家に呼んでやりなさい」と義姉。貞三の心はこれで決まる。

 富良野に台風が近づいていた。ガーデンではルイが花々を風雨から守るために大忙し。岳はガブさんにおじいちゃんの作った花言葉を教えていた。白いカンパニュラは「孫娘が嫁に行く日」。本当は「ルイがお嫁に行っちゃう日、だったけどルイがイヤがったんだ」というエピソードも貞美には楽しくてしょうがない。「孫の耳たぶ」と命名されたラムズイヤーの柔らかい産毛に覆われた赤ちゃんの耳のような手触りに、貞美は生まれたばかりの岳の耳を思い出す。

 夜。ルイは貞三から貞美が富良野に戻っている理由を知らされる。「死を迎える前にルイさんや岳くんの顔が見たかったんだろう」と言って、貞美に汚点があったとはいえ、親子の絆を断ってしまったことを貞三は詫びる。そして「明日にでも貞美を迎えにいって、岳の部屋で過ごしてもらおうと思う」と提案されるが、ルイは再会したばかりの父との別れがすぐそこに迫っていることをにわけには受け入れられない。

 翌日、ルイはガーデンの花を街の花屋に卸しに行く。貞美の同級生・ともみ(ふせえり)の店で、ルイはここで貞美が最近、同級生仲間から生前葬でもてなされたという話を聞く。幼なじみの辛口ジョークを笑うとこだが、ともみの意に反してルイは大泣き。「どうしたの!?」ってことで、貞美の病状はともみと、そして親友のエリカ(石田えり)の知るところとなる。

 居ても立っても居られずエリカは貞美のトレーラーへ。「あんたのこと今も好きかも。お世話させて!」と中年女の唐突なアプローチを受け貞美は苦笑するばかりだが、エリカは真剣なのだ。好き嫌いはともかく、死にそうな友だちを放っておけるわけないから。

 と、それまでさんざんおしゃべりしてたエリカの口が止まる。視線が一点で止まっている。その先にいたのは貞三だった。「じゃ!」とエリカが気を利かせて去っていくと、ようやく親子は再会を果たす。「帰ってくるな!」と激高していた父は、貞美の予想に反して笑顔だった。

 トレーラーの横で、父は椅子に腰掛けながら、息子は反省の意か地面に直座りでポツポツと言葉を交わす。貞三は最初から包み隠さず、自分は貞美の病状を水木から聞いたと告げる。そして、自分の感情のままに貞美と孫たちを引き離したことを詫び、「家に帰ってこないか?」と微笑む。貞美は思わぬ温かい申し出に涙が止まらない。

「考えさせてください」と応えを留保した貞美に、貞三は続けて問う。「キミは今、何がいちばんしたいんだ?」 貞美は考えて応える。「孫娘が嫁に行く日、と父さんが表した花を見ました。ルイがバージンロードを歩くのにつきあえなくて残念だ」と。

 夕方、ルイが「スープ作った」とトレーラーまで持ってきてくれた。貞美はちょうど、ルイのためにエゾエンゴサクの球根を植えてたとこ。「春になったらここら一面に咲かせるぞ、楽しみにしてろ」と笑う父の横顔にルイは泣きそうになる。

 序盤、水木に会いに病院に行くシーンで、貞三はアポをとらず普通の患者同様順番を待ったうえ、自分の番になると「患者さんの診察が終わってからでいい」と水木に顔だけ見せる。ストーリー展開には無関係だが、ドラマのメッセージとしてはこのシーンがあるとないとじゃ大違いだ。
 ドラマではよく、主人公の都合で人んちに突然夜中に押し掛けたり、公衆の面前でケンカしたり泣いたり追っかけたりするが、普通の生活は個人の都合より社会のルールが優先するわけで、貞三に「息子の死」という自己都合を抱えながらも社会的にふるまうことを忘れさせなかったのはあっぱれ。

 それから貞三と貞美がトレーラーを背に語り合うシーン。緒形さんが手に力が入らなかったのかミネラルウォーターのフタを開けられなかったのを中井貴一がさりげなくカバーしたり、トンボが緒形さんの肩にとまってのんびりしてたり、かなり美しい時間が展開してて何度見ても和みます。